トマス杯およびユーバー杯での銅メダル獲得という国の熱狂も冷めやらぬ中、インドのシャトラーたちは再び個人の栄誉へと照準を切り替えている。火曜日に開幕する賞金総額50万ドルのタイ・オープン(スーパー500)で、その先陣を切るのはラクシャ・センとPV・シンドゥだ。デンマークでのトマス杯準決勝、対フランスという重要な一戦を右肘のケガで欠場した第7シードのセンは、初戦でシンガポールのジェイソン・テー・ジア・ヘンと激突する。一方、ユーバー杯でテンプル部分に実験的なウェアラブルデバイスを装着しつつ、キレのある動きを見せていたシンドゥは、第6シードとして台湾のトン・チオトンを迎え撃つ。今季はマレーシアで4強、インドネシアで8強とトップ10返り咲きを目前にしている30歳の彼女だが、長く遠ざかっているタイトルを手にするには、接戦をものにするあの非情なまでの勝負強さを取り戻す必要がある。
トマス杯で印象的な活躍を見せた若手のアーユシュ・シェッティには、いきなり厳しい試練が待っている。初戦の相手は世界選手権メダリストであり第6シードの奈良岡功大だ。かつて世界選手権で銀メダルに輝き、昨季もマレーシアマスターズ等で決勝に進出した33歳のキダンビ・スリカンスは、時折見せる天才的なプレイの裏で、波の激しさとアンフォーストエラーに悩まされ続けている。定期的に表彰台へ上がるための険しい道程の第一歩として、2021年世界選手権決勝の再戦となる第8シードのロー・ケンユーとの大一番に臨む。ケガや違和感に進行を阻まれてきたタルン・マンネパリも日本の渡邉航貴と対峙する。
女子シングルスも過酷なドローが並んだ。ウンナティ・フーダは第4シードのポルンパウィ・チョチュウォンと、デヴィカ・シハーグは仁平菜月、タンヴィ・シャルマは明地陽菜と対戦する。マルヴィカ・バンソッドはカナダのウェン・ユー・チャンと当たるが、アンモル・カルブに至っては、元五輪女王の第2シード、チェン・ユーフェイとの初戦という極めて高い壁に挑まなければならない。イシャラニ・バルアは予選通過者との対戦が控えている。
ダブルス陣に目を向けると、トップシードのサトウィクサイラジ・ランキレッディとチラグ・シェッティ組は、インドネシアのプトラ/マウラナ組と顔を合わせる。ランキレッディの肩のケガ明けとなったトマス杯ではやや精彩を欠いたアジア大会王者ペアだが、ここでもう一度圧倒的な支配力を示したいところだ。トマス杯で気を吐いた第7シードのハリハラン/アルジュン組や、女子ダブルス唯一の出場となるパンダ姉妹、そして混合ダブルスのカプール/シヴァニ組、カピラ/クラスト組らも、それぞれの課題を胸にコートへ向かう。
バンコクでトッププロたちがしのぎを削り、世界の頂点を争うのと同じ頃、インド国内のバドミントン熱もまた別の場所で最高潮に達しようとしている。トップ層の活躍を下支えしているのは、間違いなくこうした草の根の分厚い熱量だ。奇しくもタイ・オープンと同週の5月13日から17日にかけて、ムンバイの歴史あるウィリンドン・スポーツクラブでは、「モティラム・ウラル・カンジ杯」が開催される。
グレーター・ムンバイ・バドミントン協会(GMBA)が主催し、バドミントン・グルクルが運営、ヨネックスサンライズが用具提供を行うこの大会には、賞金総額10万ルピーを懸けて市内の主要クラブから160名以上のプレイヤーが集結する。男子のモティラム杯(14チーム)、女子のウラル杯(6チーム)、ジュニアのカンジ杯(6チーム)が同時進行するこのイベントは、単なるローカル大会の枠に留まらない熱気を帯びている。
ウィリンドンSCのベフラム・アルデシール会長が国際基準のコートで熱戦をホストできる喜びを語るように、インフラ面での充実ぶりが地域の競技レベルを底上げしている。半世紀以上にわたってムンバイのバドミントンシーンを支えてきたこの大会について、GMBAのプラディープ・アイヤンガー会長は、若手シャトラーが経験豊富なベテランに挑む試金石としての役割を強調する。バドミントン・グルクルの創設者スプリヤ・デヴガンが口にするように、コミュニティの結束と競技への情熱が交差するこうしたローカルなコートの熱狂の中からこそ、明日のセンやシンドゥが生まれてくる。国際舞台の華やかなスポットライトと、国内クラブの泥臭いシャトルの応酬は、インドバドミントン界を前進させる両輪として確かな軌跡を描いている。