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【MLB序盤戦ルポ】巨大化するドジャース打線と、早くも始まった血の入れ替え

夏海いく

西海岸の巨大戦力が「誰を何番に置くか」という贅沢なパズルに興じている裏で、今季のMLBは早くも血生臭いドラマに包まれている。

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督の嬉しい悩みから話を始めよう。カブスからFAとなっていたカイル・タッカー(29)と4年総額2億4000万ドル(約372億円)という大型契約を結んだ彼らは、すでに他球団にとって悪夢のような打線を作り上げている。
入団会見後、ロバーツ監督は地元局の取材に対し「タッカーはライト、テオはレフト、アンディ(・パヘス)はセンター」と明言。注目の打順については「1番が大谷なのは分かるだろう。その後のフレディ、ムーキー、カイルの並びは話し合いが必要だが、現時点では(タッカーは)2番か3番になる」と語った。
これを受けてMLB公式サイトが弾き出した予想スタメンは、1番DH・大谷、2番ショート・ベッツ、3番ライト・タッカー、4番キャッチャー・スミス、5番ファースト・フリーマンという、息を呑むような上位打線だ。6番以降にもテオスカー・ヘルナンデス、マンシー、パヘスが控えており、まさに死角が見当たらない。

だが、こうした王者の余裕をよそに、リーグのあちこちでは早くも「粛清」の嵐が吹き荒れている。

最も激震が走ったのはフィリーズだ。開幕から9勝19敗という惨状を受け、球団はロブ・トムソン監督の解任に踏み切った。後任にはベンチコーチのドン・マッティングリーが暫定的に就任したが、彼自身は今季終了後の監督業継続に全く関心がないという。
実はこのポスト、レッドソックスを解任されたばかりのアレックス・コーラに打診されていた。しかしコーラは「残りの夏は家族とゆっくり休みたい」とこれを固辞。トムソン自身は解任に対して恨み言を口にしていないものの、彼が貧弱なロースター構成のツケを払わされた「スケープゴート」であることは明らかだ。2022年のジョー・ジラルディ解任劇と重ね合わせる声もあるが、識者の間では「今回は一時的な不振のカンフル剤ではなく、構造的欠陥が露呈した2012年の再建期に近い」という見方が大勢を占めている。もしシーズン終了後に再びオファーがあったとしても、コーラはこの火中の栗を拾うべきではないかもしれない。

一方、そのコーラを切り捨てたレッドソックスの内情も穏やかではない。
クレイグ・ブレスロー編成本部長は現在、監督解任に反発する複数の選手たちの火消しに奔走している。もしチーム状態が上向かなければ、次に荷物をまとめるのはブレスロー自身になるだろう。

首の皮一枚で繋がっている指揮官は他にもいる。メッツのカルロス・メンドーサだ。スティーブ・コーエン・オーナーの桁違いの資金力にファンは新時代の到来を夢見たが、蓋を開けてみれば結果は散々で、状況を好転させる明確なプランも見えてこない。
かつての黄金球団アストロズも同様に泥沼でもがいている。特に懸念されているのが、新加入した今井達也の適応への苦闘だ。彼の不調が単なる技術的な壁なのか、それともアストロズやヒューストンという環境が米国へのアジャストを阻害しているのか、現地でも議論の的になっている。

もっとも、プレーオフ枠が拡大された現在のMLBにおいて、4月の「大コケ」が即ちシーズンの終戦を意味するわけではない。フロント幹部たちへの匿名アンケートでも、序盤のサプライズチームや期待外れのチームについての査定はまだ流動的だ。

泥沼のチーム状況とは裏腹に、個人のパフォーマンスに目を向ければ明るい材料も多い。
ヤンキースのベン・ライスは、打席内でのアジャストが功を奏し、今やリーグ屈指のパワーヒッターへと変貌を遂げつつある。ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.も、4月を終えて相変わらずの圧倒的な存在感を放っており、今後のシーズンを牽引していくのは間違いない。

そして、新たな才能の波も押し寄せている。
ガーディアンズは、2024年のドラフト全体1位指名であるオーストラリア出身のトラビス・バザナを早くも昇格させた。デビュー戦こそ2四球(2打数無安打)に終わったものの、シドニーからクリーブランドへ辿り着いた彼の特異なキャリアは、多くのファンを魅了している。マイナーにはトップ100プロスペクト入りを目前に控える若手もひしめき合っており、世代交代の足音は着実に近づいている。

最後に、グラウンド上の目に見えない変化にも触れておきたい。
ABS(自動ボールストライク判定システム)の導入によるストライクゾーンの縮小だ。このシステムにいち早く適応して恩恵を受けるチームと、対応に苦しむチームの差が如実に表れ始めている。
総額300億円超のピースを加えて超重量打線を組むドジャースも、血の入れ替えを行って生き残りを図る東海岸の球団たちも、結局はこの新しいルールの枠組みの中で最適解を探し続けるしかないのだ。

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