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IRENのQ3決算発表を目前に控えて:ビットコインマイニングからの脱却とAIシフトが試される正念場

高杉心悟

ナスダック上場のIREN(NASDAQ: IREN)は現在、市場の期待と不安が複雑に絡み合う局面に立たされている。木曜日の市場では3.6%安の42.86ドルで寄り付き、日中の出来高が約61万8000株にとどまる中、42.21ドルから44.70ドルのレンジで推移した(なお、直近30日の平均出来高は約3380万株に上る)。過去1年間のトータルリターンが601.47%という驚異的なパフォーマンスを叩き出した銘柄とはいえ、52週高値の76.87ドルからは大きく調整しており、5.72ドルの底値から見れば依然として極端な高値圏にある。発行済株式数は約3億3228万株、時価総額およそ142億ドルを誇る同社だが、株価純資産倍率(P/B)は5.66倍、株価売上高倍率(P/S)は14.02倍と、グロース株特有の強いプレミアムが乗った状態だ。足元では50日移動平均線(41.65ドル)と200日移動平均線(47.13ドル)の間で方向感を模索しており、ベータ値4.30という数字が示す通り、市場の些細なノイズで大きく振れやすい地合いにある。

市場の視線は、5月7日木曜日の引け後に予定されている2026年度第3四半期決算に釘付けになっている。アナリスト陣の予想では、1株当たり純利益(EPS)がマイナス0.2159ドル、売上高は2億1976万ドルと見込まれている。直近12ヶ月のEPS実績は0.06ドルと辛うじて水面上にあるものの、四半期ベースでの業績のブレは激しい。経営陣によるカンファレンスコールは少し間を空けて5月13日の午後5時(東部標準時)に設定されており、ここで語られる今後の戦略的なガイダンスに投資家の関心が集まっている。

市場がこれほどまでに神経質になっているのには明確な理由がある。2月5日に発表された前四半期の業績が、コンセンサス予想(EPSマイナス0.07ドル)を大幅に下回るマイナス0.44ドルの赤字で着地したショックが尾を引いているからだ。売上高も前年同期比23.1%減の1億8469万ドルにとどまり、事前予想の2億2964万ドルに届かなかった。自己資本利益率(ROE)はマイナス10.01%に沈んだ一方で、純利益率は56.59%というやや特殊な数字を見せている。さらにこれに追い打ちをかけるように、最大60億ドル規模に上るATM(アット・ザ・マーケット)株式発行プログラムの拡大が発表された。これが目先の強烈な株式希薄化懸念として投資家心理を冷やし、株価の上値を重くしている。

しかし、ウォール街全体がIRENを見放しているわけではない。バーンスタインをはじめとする一部のアナリストや機関投資家は、同社が従来のビットコインマイニング事業への依存から脱却し、AIおよびクラウドインフラ分野へ軸足を移す長期的なピボット戦略を高く評価している。財務面を見ても、流動比率および当座比率がともに4.96と手元の流動性は潤沢であり、負債資本倍率(D/Eレシオ)も1.51と一定の健全性を保っている。事実、アナリストのコンセンサスレーティングは依然として「モデレート・バイ(緩やかな買い)」を維持しており、平均目標株価も足元の水準を大きく上回る70.08ドルに設定されている。

今年度の通期EPS予想がマイナス1ドルであるのに対し、来年度はプラス1ドルへの黒字転換がシナリオとして描かれている。AIインフラへの大規模な転換という野心的なビジョンは市場の耳目を集めるには十分だが、そこに伴う短期的な実行リスクや、収益化のタイミングのずれに対するプロの警戒感も根強い。数十倍から数百倍へと評価が分かれる不安定な株価収益率(PER)が示す成長への高い期待値に、実際の業績が追いつくことができるのか。今回のQ3決算は、IRENが描く壮大なストーリーが現実の数字として裏付けられるかを見極める、極めて重要な試金石となる。

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