金曜の外国為替市場は、前日の「介入」の余熱が冷めやらぬ中、再び神経質な値動きを見せた。ドル円は一時157円台から155円60銭近辺まで急落。木曜にわずか1時間ほどで158円台半ばから155円台半ばまで約3%も円が急騰した記憶が新しい市場参加者にとって、この突発的な動きは疑心暗鬼を呼ぶに十分だった。過去3ヶ月で5%もの価値を失った自国通貨を支えるため、当局が再び市場に足を踏み入れる準備があることは三村淳財務官の強い牽制からも明らかだが、日米の金利差という構造的な要因と、休日を控えた薄商いという悪条件が重なる中、相場は極めて脆弱な状態にある。CIBCキャピタル・マーケッツのジェレミー・ストレッチが指摘するように、流動性が枯渇気味の状況下では、ちょっとしたノイズがボラティリティを増幅させ、その度に「何が相場を動かしているのか」という猜疑心が市場を駆け巡ることになる。
こうした自国通貨の信認が揺らぐような激しい乱高下は、日本の投資家心理に無視できない変化をもたらしている。円という単一通貨に資産を置いておくリスクが浮き彫りになる中、より低コストで世界に分散投資できる金融商品への渇望はかつてなく強い。まさにこの絶好のタイミングで動いたのがSBIホールディングスだ。
日経アジアの報道によれば、同社は米運用大手ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズとタッグを組み、新たな合弁会社を早ければ5月にも設立するという。この新会社はSBIが過半数を出資して商品企画や販売といったフロント業務を担い、実際の資産運用やカストディ(資産管理)業務はステート・ストリート側に委託して徹底的なコスト削減を図る算段だ。狙うは、国内の低コストインデックスファンド市場の覇権に他ならない。
現在、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などが信託報酬0.06%未満という圧倒的な低コストで市場を席巻しているが、SBI陣営は国内外の株式や債券を組み入れたETFや投資信託を武器に、ここに真っ向から勝負を挑む構えを見せている。新会社単体で3年以内に数兆円規模の運用資産残高(AUM)を獲得するという強気の目標からは、既存商品の牙城を十分に崩せるという目算が透けて見える。
もちろん、これはSBIが描く壮大な青写真のほんの一角に過ぎない。同グループは2028年3月期までに、全体の運用資産残高を現在の約13兆円(約828億ドル)から20兆円へと引き上げる野心的なロードマップを掲げている。その推進力となっているのが、海外の巨大アセットマネジャーたちとの矢継ぎ早の提携戦略だ。2023年の米KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)との代替資産運用会社の設立合意に始まり、今年に入ってからもデジタル資産領域でのフランクリン・テンプルトンとの協業、さらには今春のアライアンス・バーンスタインとの合弁設立と、文字通り全方位で外資のノウハウを取り込んでいる。
為替介入の有無に一喜一憂する神経質なマーケットの裏側で、日本の個人マネーを巡る外資を巻き込んだ囲い込みは、すでに次のフェーズへと移行している。政府が円安の防衛戦に躍起になる一方で、民間の金融資本はよりドライに、そして強かに世界の富を取りに行くインフラ作りを淡々と進めているのだ。