物価高騰 「学校給食」や「学食」にも影響 値上げや公費で対応

物価の高騰が続き、食料品などの相次ぐ値上げを受け、都内の大学では、生活が困窮する学生を支えようと、学食のメニューを3割引きで提供する取り組みを21日から始めました。
また、小中学校の「給食」について、東京23区では、従来の給食費では維持できない状況になっているとして、値上げ分を公費で負担したり、米や牛乳などを区が購入したりする対応が、この半年で全区に広がっています。
さらなる物価高騰や長期化を懸念する声も出ています。

大学の食堂 全メニューを30%引きで提供

東京 国分寺市にある東京経済大学では、この夏に学生に食生活に関するアンケートをしたところ、
▽コロナ禍でアルバイト収入が減って食事がとれないとか、
▽仕送りを受けられないといった、
切実な声が寄せられたほか、最近では長引く価格高騰で食事を1日1食に切り詰める学生もいるということです。

こうした状況を受け大学では、後期授業が始まる21日から、大学内の食堂のすべてのメニューを30%引きで提供することになりました。

食堂のディスプレーには、もとの価格から割り引きされた価格が表示され、かき揚げそばは352円から247円に、カツカレーは440円から308円などとなっていました。

昼時になると早速、多くの学生が食事を楽しんでいました。

からあげ丼の大盛りと小鉢2つ、それに豚汁を選んだ、1人暮らしの男子学生は「これだけ豪華にして500円ちょっとだったので、ありがたいです。コロナ禍の休業で居酒屋のバイトに入れなくなったことがありました。生活費の中で一番削るのが簡単なので、食費で何とかしようと思ってしまうので、助かります」と話していました。

大学では、これまでも100円で朝食を提供したり、食事のクーポンを配ったりして対応してきたということですが、厳しさが増しているということです。

東京経済大学の橋本博一総務課長は「学生たちがコロナで経済的に困窮しているところに、物価高が追い打ちをかけている状況があります。大学として経費はかかりますが、それ以上に、経済的支援を直接、素早く実行したいと思っています。お腹いっぱい、バランスのよい食事をとってほしいです」と話していました。

“従来の給食費で維持できない” 値上げや公費対応 東京23全区で

NHKが、東京23区の教育委員会に、食料品の価格の高騰に伴う公立の小中学校の給食費への影響を聞いたところ、4月の時点で値上げや公費による対応を取っていたのは4つの区でしたが、従来の給食費だけでは維持できないとして、来月から年内の開始も含めると、すべての区に対応が広がっています。

このうち、給食費を値上げした上で値上げ分の全額もしくは一部を公費で負担したり、価格高騰分を公費で補助したりする対応を、すでにとっている、もしくは今後予定しているのは、16の区となっています。

具体的には、
▽千代田区や杉並区では補正予算案が議会で通れば、4月にさかのぼって給食費の値上げ分を負担するほか、
▽新宿区は価格高騰分としてことし7月から、1食当たり40円から52円を補助しています。

このほか、牛乳や米、油や小麦といった項目を決めて、その費用を負担しているのは8つの区となっています。

現場の工夫としては、
▽油が高騰しているため、から揚げの頻度を減らしたり、
▽旬のフルーツをやめてゼリーに変えたりしているところもあるということです。

公費負担による対応は、多くの区が国の臨時交付金を活用していて、各区からは、さらなる物価高騰や長期化を懸念する声が聞かれました。

小中学校の給食費をめぐっては、物価高騰により保護者の負担が増すことがないよう、文部科学省が今月12日に各自治体などに対し、臨時交付金を活用して支援策を進めるよう改めて求めています。

値上げへの給食の対応 東京 港区では

食料品の相次ぐ値上げを受け、自治体では、値上がりした分をまかなうため、公費でコメ代を負担したり、1食当たりの費用の補助を決めたりして、対応を拡大しています。

東京 港区では、公立の小中学校に通う児童や生徒の保護者から、1食分の給食費として236円から324円を徴収していますが、食料品の価格高騰で、例えば先月も油18リットルが8500円から1万5000円になるなど、多くの食材で値上げが相次いでいます。

こうした事態を受け、港区はことし6月から給食費の10%程度にあたるコメ代を区が負担していて、つながりのある地方の自治体の業者から直接買い取って学校に支給しています。

学校には、栽培している自治体の特徴や特産品などの情報も合わせて提供していて、栄養士や教員が子どもたちに説明するなど、食育にも生かしているといいます。

21日は区内の御成門中学校で、山形県舟形町のコメが提供され、生徒たちは鶏肉の生姜炒めがのった白米をおいしそうに食べていました。

3年生の男子生徒は「毎日おかわりするほどおいしいです。期間限定でさまざまな都道府県のご飯が出るので、バリエーションがあってとても楽しく、説明にも関心を持ちながら食べています」と話していました。

この中学校では、メニューを鶏肉の照り焼きやサバのみそ煮など油の使用量が少ない料理に変更しているほか、食材を工夫するなどして、少しでも食費を抑える取り組みも続けているということです。

しかし、値上がりが続いていることから、港区では、来月からは1食当たり10.7円を公費で負担する追加の支援も始めることにしています。

港区教育委員会の管理栄養士、前口愛子さんは「これだけ急激に大きな幅でどんと価格が上がることは経験したことがなく、私たちも先が見えずに、どうしたらいいのかと感じています。子どもたちの成長に寄与する給食を栄養価を落とさず出していくためにも、早く安定した供給がなされるよう願っています」と話していました。