サンダーソン・ファームズ選手権では、ギャリック・ヒゴとスティーブン・フィスクが最終日にバーディー合戦を繰り広げ、ゴルフファンを大いに沸かせた。オッズ101倍(+10000)前後だったフィスクに賭けたファンは、大きなリターンを得る結果となった。今週、舞台を日本に移して開催される「ベイカレント・クラシック」でも、ダークホースが波乱を巻き起こす可能性はあるのだろうか。
舞台は新たな横浜カントリークラブ
今週のPGAツアーはアジア、日本の横浜カントリークラブで開催される。今大会の新たなホームコースだ。出場選手は78名と限られており、そのうち59名の優勝オッズが51倍(+5000)以上となっていることから、再び番狂わせが起こる土壌は整っていると言えるだろう。
このコースはPGAツアーのローテーションに加わったばかりで、ショットリンクのデータが存在しない。そのため、専門家たちはコースの空撮映像やレイアウト図を基に、手作業で重要な指標を分析する必要に迫られている。
横浜カントリークラブは全長7,315ヤードのパー71。パー4が13ホール、パー3が3ホール、そしてパー5はわずか2ホールという構成だ。ビル・クーアとベン・クレンショーによって改修されたこのコースは、多様なプレースタイルのゴルファーに成功のチャンスを与える設計となっている。
攻略の鍵は「飛距離」か「正確性」か
コースのレイアウトから、選手たちの戦略は大きく二つに分かれると予想される。
一つは、飛距離を武器に狭いフェアウェイを果敢に攻める「ボンバー」タイプのアプローチだ。着弾地点を外せば深いラフにつかまるリスクを許容し、アドバンテージを狙う。
もう一つは、トラブルを避け、より広い着弾エリアにボールを置く保守的な「ポジショナル」タイプのアプローチだ。グリーンに対して有利な角度から、正確なショットで勝負するスタイルである。
最大の変数となる悪天候
今大会の予測をさらに困難にしているのが天候だ。特に初日の木曜日は、台風が東京から約320キロ(200マイル)の距離を通過する見込みで、一日を通して秒速11~13メートルの強風が吹き、最大瞬間風速は秒速17メートルに達すると予報されている。降水確率も80%と高く、選手たちは厳しいコンディションでのプレーを強いられることになる。
その後、天候は一時的に落ち着くものの、最終日の日曜日には再び風が強まり、秒速8~10メートルの風と最大瞬間風速11メートルの風が吹くと見られている。
限られたデータと予測不能な天候を踏まえ、専門家たちは主に2つの異なる分析モデルを用いて優勝候補を絞り込んでいる。一つは「ボンバーモデル」、もう一つは「ポジショナルモデル」である。
ボンバーモデルの重要指標と上位選手:
-
ドライビングディスタンス: 20%
-
ドライビング精度: 10%
-
近距離アプローチ(100-150ヤード): 20%
-
ボギー回避率: 12%
-
パッティング(ベント芝): 13%
-
パー4でのスコア: 10%
-
アプローチショット: 10%
-
スクランブリング: 5%
このモデルでのトップ5は、ニコライ・ホイゴー、カート・キタヤマ、パトリック・フィッシュバーン、エミリアーノ・グリジョ、ゲーリー・ウッドランドだ。
ポジショナルモデルの重要指標と注目選手:
-
ドライビング精度: 25%
-
アプローチ(125-175ヤード): 20%
-
ロングアイアン(200ヤード以上): 5%
-
ボギー回避率: 12%
-
パッティング(ベント芝): 13%
-
パー4でのスコア: 10%
-
アプローチショット: 10%
-
スクランブリング: 5%
専門家たちの優勝予想
アレックス・ノレン(優勝オッズ23倍、トップ10入り3.2倍) 両モデルで高い評価を受けるキタヤマも有力だが、ベント芝でのパッティングにやや不安が残る。一方で、ノレンは優れたパットの名手であり、特にベントグリーンを得意とする。彼は最近4試合でトップ10入りを3回果たし、ベットフレッド・ブリティッシュ・マスターズとBMW PGA選手権で優勝するなど絶好調だ。ボールストライキングも好調で、BMW PGA選手権が開催されたウェントワースクラブと横浜カントリークラブは、ティーショットの正確性とグリーンマネジメントが求められる点で共通しており、ノレンに適したコースと言える。
マックス・ホーマ(トップ20入り2.15倍) 2025年シーズン序盤は5戦連続予選落ちとスランプに苦しんだホーマだが、復調の兆しを見せている。スイングコーチやキャディ、用具の変更が重なり不調に陥っていたが、ここ6大会連続でアプローチショットのストローク・ゲインドがプラスに転じており、ボールストライキングが明らかに改善している。サンダーソン・ファームズ選手権では大会最少スコアとなる「64」を記録するなど、本来の姿を取り戻しつつある。
松山英樹:母国での勝利への特別な想い かつてZOZOチャンピオンシップとして知られた今大会には、ザンダー・シャウフェレやコリン・モリカワといったスター選手も参戦する。しかし、多くの専門家が注目するのは日本の松山英樹だ。あるツアーコーチは「母国でこの大会に勝つことは、松山にとって他のどの選手よりも大きな意味を持つ。これはデータでは測れない要素だ」と語り、優勝候補筆頭に挙げている。
その他の注目選手 他にも、直近の大会で2位に入り勢いに乗るギャリック・ヒゴや、広いフェアウェイと得意のウェッジプレーがコースに適合すると見られるマイケル・キム、飛距離と安定したパットが武器のクリス・ゴッターアップなど、様々なタイプの選手が優勝候補として名前が挙がっている。
新たなコース、そして台風の接近という不確定要素が満載のベイカレント・クラシック。選手たちの適応力と精神力が試される4日間となるだろう。