11月 牛乳なども値上げ メーカー 酪農家からは“限界” の声

さまざまな食品の値上げが続く中、11月からは牛乳や乳製品、粉ミルクなども値上げされました。

食卓に欠かせない食品の値上げに消費者からは悲鳴に近い声が上がる一方、メーカーや酪農家からは“努力の限界” “危機的な状況”といったことばも。

一方、値上げによる消費の冷え込みが懸念されていることから、新商品を発売し、消費を後押ししようとする動きも出ています。

買い物客「ここまで上がるとは思ってなかった」

原材料価格の高騰に円安が重なってさまざまな食品の値上げが続く中、今月も牛乳などが値上げされ、宮崎県内の消費者からは悲鳴に近い声が上がっています。

このうち宮崎県日南市で4つの店舗を展開しているスーパーでは、1日から牛乳の価格を大きく引き上げました。

10月31日まで1本248円だった1リットル入りのパックが268円になったほか、198円だった商品も238円になるなど、20円から40円引き上げられました。

このほか、400グラム入りのヨーグルトも30円高い198円になるなど、一部の乳製品も値上げされました。

買い物に訪れた女性は「ここまで上がるとは思ってなかったのでちょっとびっくりしました。牛乳は、子どもたちが毎日飲むので厳しいです」と話していました。

70代の男性は「毎日必ず食べる食品の値上げはきついです。食品ロスをしないようにしたり電気代を節約したりしてやりくりするしかないです」と話していました。

粉ミルクも値上げ でも「どうしても削ることできない」

今月から乳幼児向けの粉ミルクも複数のメーカーが値上げし、子育て世帯からは家計への影響を心配する声があがっています。

粉ミルクは今月から▽明治が7.4%から7.5%、▽アサヒグループ食品が3.8%から4.2%、値上げします。

東京 葛飾区に住む岡田乃梨子さんは、生後5か月になる双子の兄弟の授乳のため、粉ミルクを使っています。

1日に5回から6回、2人分の授乳をするとおよそ800グラム入りの粉ミルクの缶は4日ほどで空になるといいます。

3か月ほどの間に使用した粉ミルクは30缶近くにのぼり、1か月の粉ミルク代は1万5000円ほどに達しています。

値上げを前に先月、ドラッグストアに連日通って粉ミルクをまとめ買いしたほか、ともに値上げされる離乳食も今後に備えて購入しました。

岡田さんは現在、育休を取得していますが、育休開始から半年を過ぎると給付金の額が減額されることもあり、粉ミルクなどの値上げが家計にどう影響するか不安に感じているといいます。

岡田さんは「粉ミルクは子どもたちにとってのご飯で、削ることはどうしてもできないので、値上がりはしんどいです。1つ1つの値上がりは小さくても、量が多くなると家計への影響も大きくなるので、大打撃となりかなり厳しいです」と話していました。

酪農家 エサ代が高騰 値上げでもコスト上昇補えず

茨城県内の酪農家からは、牛乳が値上げされても円安などの影響で引き続き厳しい経営状況が続くとして、消費者に理解を求める声が上がっています。

小美玉市でおよそ230頭の乳牛を飼育する宮澤智浩さんは、牛乳の原料となる生乳を一日およそ5トン、県内の生産者団体を通じて乳業メーカーなどに出荷しています。

エサとなる牧草やトウモロコシなどはおよそ90%を輸入しているため、ウクライナ情勢や急速な円安の影響でエサ代が高騰し、1頭あたり一日2300円と、これまでのおよそ1.5倍になっているということです。

宮澤さんは、みずからの畑でトウモロコシを育ててできるだけ輸入のエサを減らそうとしていますが、1頭あたり一日46キロのエサが必要なため輸入に頼らざるをえないといいます。

こうした酪農家の苦境を背景に、ことし7月、関東地方を中心に生乳を販売する生産者団体と大手乳業メーカー3社は、生乳の価格を今月の出荷分から1キロあたり10円値上げすることで合意しています。

これに合わせて宮澤さんの出荷する生乳も今月から値上げになりますが、それでも生産コストが上昇した分の3分の1程度しか補えず、厳しい経営状況が続くとしています。

宮澤さんは、「為替の状況にもよりますが、30円くらいの値上げをしていただかないと、酪農家はかなり厳しいです。消費者の皆さんには価格が上がっても牛乳を飲んでいただきたい」と話しています。

メーカー “企業努力で抑えられる限界”

石岡市にある乳業メーカーも、現在の生産コストの増加は、企業努力で抑えられる限界を超えていると訴えています。

このメーカーでは、県内の生産者団体から一日30トンから45トンの生乳を受け入れ、牛乳やヨーグルトなど9種類の商品を製造していますが、今月の出荷分からすべての商品を値上げすることになりました。

理由についてメーカーは、生乳の価格が引き上げられたことに加え、ヨーグルトの容器や牛乳のパックといった包装に使う資材の価格が上昇しているためとしています。

値上げの幅は、生乳が使われる割合が高い商品は10%以上、割合が低い商品は5%程度になる見通しだということです。

「茨城乳業」社長室の浜田慎一室長は、「企業努力で抑えられるコストは抑えて、それでもかなわないものをお願いする形にしています。消費者の皆さまには大変心苦しいですが、この危機的な状況をなんとかご理解いただたい」と話していました。

牛乳を使った新商品で消費を後押しする動きも

値上げによって、牛乳や乳製品の消費の冷え込みが懸念されていることから、飲料メーカーの中には牛乳を使った新商品を発売し、消費を後押ししようとする動きが出ています。

牛乳や乳製品は、メーカー各社と生産者団体が牛から搾る生乳の取引価格の引き上げに合意したことなどから、1日の出荷分や受注分から価格が引き上げられ、今後、消費の冷え込みが懸念されています。

このため消費拡大につなげようと、アサヒ飲料はJA全農と共同で、主力の「カルピス」の原料に国産の脱脂粉乳のほか、牛乳を加えた新商品の販売を1日から始めました。

販売を始めた横浜市のスーパーでは、酪農や牛乳の消費を応援するといったのぼりや看板が立てられていて、訪れた客が商品を手に取っていました。

70代の女性客は「牛乳が高くなるのは困るが、こうした新しい商品が出てくるのはおもしろいと思う」と話していました。

JA全農は、ほかのメーカーとも牛乳を使った飲料や菓子などの開発を進めていて、今後も新商品を販売し、消費を後押しすることにしています。

JA全農の山田晋也さんは「酪農家は懸命に作っているが、値段が上がり消費が低迷することを懸念している。今後も企業とのコラボを通じて消費拡大を促したい」と話していました。